膀胱がんの治療について

図3 経尿道的膀胱がん切除術のイメージ図
経尿道的膀胱がん切除術は、お腹を開けることなく膀胱鏡を尿道から膀胱に挿入し、筋層非浸潤性膀胱がん(筋層に入り込んでいないがん)を切除する場合に行われます。腰椎麻酔(ようついますい)もしくは全身麻酔を行ったあと、切除用膀胱鏡を尿道から膀胱まで挿入します。膀胱鏡に組み込まれているループ状の電気メスで、がんを切除します。手術時間の多くは1~2時間程度です。

手術療法が治療の基本になり、がんが筋層に浸潤していない場合と浸潤している場合によって治療法が大きく異なります。膀胱がんの約80%は、筋層非浸潤性膀胱がんで、経尿道的けいにょうどうてき膀胱腫瘍切除術(以下 膀胱がん内視鏡切除術、TURBT)によってがんが切除され、膀胱を温存することができます。一方、がんが筋層に入り込んでいる場合は、主に膀胱を完全に切除する膀胱全摘除術が行われます。

膀胱がん内視鏡切除術は、尿道から内視鏡を挿入して、膀胱内を観察しながらループ状の電気メスでがんを切除する方法です(図3)。

筋層非浸潤性膀胱がんは多発することがあり、乳頭状がんのまわりに小さな病変が広がっていたり、一見正常にみえても平坦ながんである場合が多いことが知られています。膀胱は温存できますが、再発する割合が高いうえ、なかには病勢が進行することが知られている厄介ながんです。再発の主な要因は、通常の内視鏡では検出できない小さながんや、平坦ながんを見落としやすいことが考えられています。再発のリスクを減らすには、見た目では発見が難しいがんを確実に検出して取残しを減らすといった、膀胱がん内視鏡切除術の質の向上が重要といわれています(日本泌尿器学会編膀胱癌診療ガイドライン2019年版)。

膀胱がん切除術後は、がんの悪性度あくせいど深達度しんたつどをみる病理診断が行われます。病理診断後、再発のリスクが高いと判断された場合は、膀胱の中に抗がん剤を注入したり、弱毒結核菌(BCG)を注入したりします。BCGは結核の予防ワクチンで、免疫反応を高めがん細胞に作用すると考えられています。また再発のリスクを考慮して、手術後も膀胱内視鏡検査を定期的(初期治療では3か月後に行い、その後はリスク別により実施間隔が決まります)に行う必要があります。がんが再発した場合、再び膀胱がん内視鏡切除術が行われますが、このがんは、再発を繰り返す間に徐々に悪性進展する場合があります。再発後、病状が進展した場合、膀胱を摘除することもあります。

(大阪暁明館病院名誉院長/奈良県立医科大学名誉教授 平尾佳彦先生監修)

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