膀胱は、腎臓でつくられた尿を一時的にためて、排出させる臓器で、内側から外側に向かって、粘膜、筋層、脂肪層の3層で構成されています(図1)。粘膜はさらに粘膜上皮、粘膜下結合組織より構成されています。我が国の新規に診断される膀胱がんは21,000人/年と予測されています(2019年がん疾患数予測、国立がん研究センターのがん登録・統計より)。
膀胱がんの約90%は粘膜より発生し、がんが粘膜にとどまったままで筋層に浸潤していない筋層非浸潤性膀胱がん(図2のA、B、C)と、筋層に浸潤した筋層浸潤性膀胱がん(図2のD)に大別されます。
筋層非浸潤性膀胱がんには、ちょうどイソギンチャクのような形をし、内腔に向かって突出する乳頭状のがん(図2のA、C)や、粘膜内を平坦に広がる上皮内がん(図2のB)があります。
膀胱がんを疑う主な症状として、痛みなどを伴わない、いわゆる無症候性の血尿があげられます。見た目で分かる血尿だけでなく、顕微鏡でわかる程度の血尿も含みます。無症候性の血尿のほかに、尿回数が多い頻尿、排尿後に残った感じがする残尿感や排尿時に痛みを感じる排尿痛を伴うこともあります。無症候性血尿があった時や膀胱炎症状が軽快しない時は、膀胱内視鏡検査が行われます。
膀胱がんが疑われると、膀胱内視鏡検査と尿細胞診検査が行われます。膀胱内視鏡検査は、膀胱鏡(先端にカメラの付いた細い管)を尿道から膀胱へ挿入して膀胱内を観察する検査で、がんの発生部位や大きさ、数、形状などを確認します。尿細胞診検査は、尿の中にがん細胞があるかどうかを調べる検査です。
さらに検査の結果次第では、超音波検査(エコー)、コンピュータ断層検査(CT)、核磁気共鳴検査(MRI)や胸部X線検査、骨シンチグラフィーなどを行います。最終的な膀胱がんの確定診断には膀胱粘膜を採取して行う検査が必要になります。
(大阪暁明館病院名誉院長/奈良県立医科大学名誉教授 平尾佳彦先生監修)