東京都立大学による研究論文発表のお知らせ ~5-ALA+SFCで電子伝達系複合体I欠損の症状改善の可能性~

SBIホールディングス株式会社の子会社で5-アミノレブリン酸(5-ALA)※を利用した医薬品、医療機器の研究・開発等を行っているSBIファーマ株式会社(所在地:東京都港区、代表取締役執行役員社長:北尾吉孝)と東京都公立大学法人東京都立大学(所在地:東京都八王子市、学長:大橋 隆哉)は、オックスフォード大学出版局の科学雑誌「Human Molecular Genetics」に「5-アミノレブリン酸はショウジョウバエの複合体I欠損をバイパスし生理的機能不全を改善する」という論文を投稿し、掲載されましたので以下の通りお知らせいたします。なお、本論文は、東京都立大学の安藤香奈絵准教授(責任著者)、SBIファーマ株式会社川崎研究所の野澤菜緒子(筆頭著者)らの共同研究グループによる研究成果を発表したものです。

 

掲載誌 Human Molecular Genetics
表題 5-Aminolevulinic acid bypasses mitochondrial complex I deficiency and corrects physiological dysfunctions in Drosophila
URL https://academic.oup.com/hmg/advance-article/doi/10.1093/hmg/ddad092/7207871
要旨 ミトコンドリアの酸化的リン酸化(OXPHOS)において、電子輸送の最初の段階の反応を行う複合体I(CI)の欠損は、ミトコンドリア病の原因のうちの1つである。CIがOXPHOSに最も多くの電子を供給する一方で、複合体II(CII)も電子の供給源であり、この経路を強化することで、CIの欠損を補う可能性が考えられた。そこで、5-アミノレブリン酸(5-ALA)はヘムの重要な前駆体であり、CII等の活性に必須であることから、5-ALA がCI欠損を補う可能性について検討した。本研究では、5-ALA塩酸塩とクエン酸第一鉄ナトリウムの組み合わせ(5-ALA-HCl+SFC)をCI欠損ショウジョウバエに与えると、ATP産生が増加し、CI欠損ショウジョウバエの異常な表現型が抑制されることを明らかにした。重要なCIアセンブリータンパク質“NDUFAF6の相同遺伝子であるショウジョウバエの遺伝子 “sicilyをノックダウンすると、CI欠損ショウジョウバエで、乳酸とピルビン酸の蓄積、神経筋接合部の発達異常、運動機能障害、寿命の短縮などの有害な表現型が引き起こされた。5-ALA-HCl+SFCを含んだ餌の給餌により、“sicilyをノックダウンしたショウジョウバエに対し、CI活性の回復なしにATPレベルの増加、CII及びCIV活性の上昇、乳酸とピルビン酸の蓄積の抑制、神経筋接合部の発達と運動機能の改善が観察された。これらの結果から、5-ALA-HCl+SFCがCI欠損に対処するために代謝プログラムの変化を促したことが考察された。

 

生体が生命活動を行うために必要なエネルギー(ATP)のほとんどは酸化的リン酸化(OXPHOS)とよばれる、ミトコンドリアの働きによって作られています。OXPHOSには、ミトコンドリアの呼吸鎖複合体(複合体I~IV)と、ATP合成酵素が必要です。呼吸鎖複合体の異常は、様々な臓器や組織で、臨床症状を引き起こすことが報告されており、ミトコンドリアの働きが低下してしまう、ミトコンドリア病の原因の一つとされています。なかでも、複合体I(CI)異常を有するミトコンドリア病患者では、重篤な神経症状や、血中の乳酸が異常に増えて血液が酸性化する乳酸アシドーシス症状を呈することが報告されています。また、CIの構造に必要な、ヒトの遺伝子“NDUFAF6”は、ミトコンドリア病の原因遺伝子の一つとして知られています。本研究では、“NDUFAF6”と似た働きをするショウジョウバエの遺伝子 “sicily”の働きを人工的に妨げたCI異常を有するショウジョウバエモデルを作製し、5-ALAとSFCの給餌が本モデルに与える影響を調べました。その結果、CI異常を有するショウジョウバエモデルにおいても、運動能力の異常などの神経異常や乳酸の蓄積などがみられ、5-ALAとSFCの給餌によりこれらの事象が抑えられることがわかりました。本研究により、5-ALAとSFCの給餌は、CI異常を有するショウジョウバエモデルにおいて、乳酸の蓄積や神経異常をはじめとした、CI異常を原因とするエネルギー不足に伴う症状を緩和できる可能性が示唆されました。

 

(※)5-アミノレブリン酸とは:体内のミトコンドリアで作られるアミノ酸。ヘムやシトクロムと呼ばれるエネルギー生産に関与するタンパク質の原料となる重要な物質ですが、加齢に伴い生産性が低下することが知られています。5-アミノレブリン酸は、焼酎粕や赤ワイン等の食品にも含まれるほか、植物の葉緑体原料としても知られています。

以上

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本プレスリリースに関するお問い合わせ先:
SBIファーマ株式会社
E-mail: info_ala@sbigroup.co.jp

東京都公立大学法人
東京都立大学管理部企画広報課広報係
TEL: 042-677-1806 E-mail: info@jmj.tmu.ac.jp
東京都立大学大学院理学研究科生命科学専攻 安藤 香奈絵准教授
E-mail: k_ando@tmu.ac.jp

 

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